一斉発売の謎「ひやおろし」の小話
天の声さん曰く「利き酒会を企画せよ」
先日、LINEにあげた一枚の「ひやおろし」の写真に驚くほどの反応があって驚いた。気づくと未読が相次いでいた。たくさんの人が地酒談議に参加していた。みんながそんなに地酒を飲んでいるとは思わなかった。そして急きょ「利き酒会」企画が浮上した。僕は地酒の師匠に出会って、その魅力に惹かれた一人だ。第2の地酒ブームの頃からだから、かれこれ四半世紀になる。飲んだ種類や本数は、数えると怖くなる。日本の文化は四季の楽しみ方にあると言うが、地酒も季節の顔があってとても楽しい。ひやおろしは夏を越える頃に出すので、8月後半には様々な蔵から出荷され、特約を持つ特定の酒屋で販売が開始される。「もうそんな季節か」と感じる瞬間だ。一部のひやおろしの「一斉発売」はこの3~4年のことで、石川県の3組合が仕掛けた「フェア」みないなものだ。これが当たり、ブームのように有名になっていった。今年は27銘柄を9月8日に一斉発売したそうだ。ひやおろしは、貯蔵前に一度火入れしている「生詰め」なので、正確に言えば「生の酒」ではない。世の中にあふれる「生貯蔵酒」も、火入れをしている点では生の酒ではない。ややこしい話だ。だが、そんなこんなも地酒の魅力のひとつだ。そんなひやおろしは季節品だから10月には市場から消えてしまう。生酒の本命は12月後半から出回る「新酒しぼりたて生」だろう。いわゆる「なまなま」「ほんなま」の酒だ。原酒の生酒を味わえるのもこの時だ。ちょうどその頃に「利き酒会」企画が実施できればいいな、と考えている。寒仕込みの地酒のデビュー戦なので「今年の出来はどうかな?」などと、通になった気分が味わえる。ボジョレーヌーヴォやノベッロのようなカッコよさはないが、日本人を感じる「儀式」でもある。詳しくは企画の発表まで未定だが、僕たちの年齢もあるので、量を控えながら、なるべくたくさんの種類を楽しめるようにしたい。楽しみに待っていてほしい。